「新国立競技場」をめぐる大騒ぎ 111号
 このところ、東京オリンピックにかかわる新国立競技場のデザイン、工費等について、新聞、テレビ、雑誌そのほかの報道機関、遂に内閣までまきこんでさわがしいことになっています。
 その競技場のデザイン選考審査委員長のA・T氏について、多くの批判が寄せられています。
 その設計ミス、予想外の莫大な工費、出来あがった建物の評判の悪さなどとりあげられています。(FRY DAY八月七日号)
 もちろん世の中には、いろいろな人がいるわけですから、いろいろな意見が出てくるのは当然でしょう。
 過般、かほく市の西田幾多郎記念哲学館で講演をしたとき、三階の休憩室に案内され、四方見はらしのよいはずのそとの景色を見ようとしましたが、磨りガラスがたちはだかっていました。外部と遮断されているのです。聞けばA・T氏の設計だということでした。
 私の実弟は、淡路市の真言宗御室派別格本山F寺の住職をしていましたが、七年まえに遷化しました。檀家総代の
サンヨー電気の井植さんが、数億円を投じて本堂を建立しました。設計はA・T氏です。一見して、私は、「なんだ、これは?」。唖然としました。奇妙きてれつというほかありませんでした。
 ユニークで奇想天外なすがたをつくりあげようとするのも結構ですが、それが、往々にして極端に走る。自分の考えを絶対化して、一人よがりをつきすすむ。ふつうの感覚を無視する、ひとの意見に耳を傾けない、べらぼうな予算、費用を、平気でおしつける、自己責任はとろうとしない、などなど。
 少なくとも、この種のことについては、私は、注意しなければと、あらためて思ったことでした。

戻る