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「いろはにほへと」をご存知でしょう。 あれは、実は、次のような歌で、むかしから「いろは歌」とよばれます。
色は匂へど 散りぬるを 我が世 誰ぞ 常ならむ 有為の奥山 今日越えて 浅き夢見し 酔ひもせず
「いろは歌」の意味は、こんなことになるでしょう。
美しく咲いている花も、やがて散ってしまう。 この世で、誰か、永遠であるものがあろうか。 悩み苦しみの山坂をいくつも越えてきた今、 うたかたの夢に、もう酔い痴れることもない。
この「いろは歌」は、平安時代、弘法大師空海(774-835)がつくったといわれます。しかし、国語学者のなかには、異説をとなえる人もいます。 平仮名で、しかも同じ字をくりかえして使うこともなく、深遠な意味をもりこんだ「いろは歌」を、誰がつくったというのでしょう。かりに弘法大師でなければ、大師と肩をならべる超一級の大人物でしょう。 私たち日本人は、弘法大師の名前も、またどんな人物かも知らなくても、あるいは仏教に関係のない人でも「いろは歌」は知っています。平仮名は、毎日、読んだり書いたりしています。 いや、平仮名を使わないで過ごすことは、一日たりとも出来ません。 そして、知らず、知らずのうちに、仏教のなにかを吸収しているといえましょう。
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