仲代達矢さん 禅に凝っている 136号
 五十数年まえ、大学生のころ、仲代達矢さんの「人間の条件」という長時間映画を観た。
 その内容は、すっかり忘れてしまったが、強烈な仲代さんのイメージは伝わっている。弟さんの仲代圭吾(けいご)さんはシャンソン歌手、なんどか直接目にし、耳にしている。
 仲代達矢さんは、文化功労者、文化勲章を受章され、七尾市の能登演劇堂で年間、二十五回上演という。
 まさに、当代、日本を代表する役者六五年の巨人である。
 仲代さんは、最近、禅に凝っているという。鈴木大拙先生の「刹那の中に永遠がある」という意味の言葉についてよく考えているという。
 そして、「死ぬまで役者ですから、死ぬまで勉強しなければいけない、と思っています」(北陸中日、一月三日)
「ただ、一日、一日を生きることの大切さをあらためて感じている」(北國、一月六日)と。
 仲代さんは、私より三歳年長の八十四歳。学者、教育者、宗教者、経営者として生きてきた私にとって、仲代さんの禅のことばは、文句なしに、ずしりとひびく。いつもいのちがけで、苦難に体あたりしてきたのだ。うーむ、そのとおりだ、とひとり、うなずいている。

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