「いろはにほへと」(2) 第15号
 「いろは歌」は、「諸行無常(しょぎょうむじょう)」という仏教のことばを、あのようにあらわしたといわれています。
 「諸行無常」・・・。どこかで聞いたような。そうでした。あの「平家物語」のいちばんはじめに出ていましたね。
 諸行とは、ものも、こころも、すべてのものはうつりかわっていく様子をいいます。
もろもろのものは、すべて変化してとどまることがないのが無常ということばのあらわすところです。
 もう四十数年まえになりますが、大学院の私の恩師は、物質の原子は、昔は固定して変化しないといわれていましたが、「原子核を中心として、電子・中間子などの結合から成る運動体であり、物質は微粒子といえども固定不変のものではなく、常に変化しているエネルギーにすぎないことが明らかにされ、またこれらの原子の複合から成る諸物資は、大は宇宙の天体にいたるまで、物理的・化学的に幾重にも変化して止まないものである。」と申されました。
 「諸行無常」は、あらゆるものに共通する事実であり、例外のない普遍的な真理だといえましょう。
すべてのものはうつりかわる・・・そんなことなら、誰でも知っているよ、そんなあたりまえのことを説くのが仏教かといわれるかも知れません。
そうです。ごくあたりまえの事実を知りなさい。あたりまえの事実をありのままにうけとめなさいと仏教は教えているのです。
 たったこれだけのことがわからないばかりに、この世は、悲しみ、苦しみ、だましあい、にくしみあい、殺しあいが絶えないのではないでしょうか。
 仏教は、「諸行無常」を学び、修行するのです。




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